WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査は受けるべき?WISC-Ⅳとの違いと再検査の判断基準を解説

心理・考察

2022年2月10日、WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査が日本で正式に発売されました。ウェクスラー式知能検査としては、約11年ぶりの大きな改訂です。前回の WISC-Ⅳ(ウィスク4) が発売されたのは2011年1月。今から見ると、すでに「一世代前の検査」と言える時期に入っています。

このような中で、保護者の方や支援者の方から、「すでにWISC-Ⅳは受けていますが、WISC-Ⅴもあらためて受けた方がよいのでしょうか?」という質問をよく聞かれます。

今回は、この疑問について検査の改訂点・再検査の目安・実務的な判断基準を整理して解説します。

前検査から1年以上経っていればWISC-Ⅴは受ける価値あり

結論からお伝えすると、WISC-Ⅳを受検してから1年以上経過している場合は、WISC-Ⅴを受ける意義は十分にあります。

理由は大きく3つあります。

  1. WISC-Ⅳは内容的にやや古くなっている
  2. 知能構造の捉え方がWISC-Ⅴでより細分化された
  3. 現在の支援・診断・合理的配慮の根拠としてWISC-Ⅴが主流になりつつある

順番に説明します。

WISC-Ⅳは本当に「古い」のか?

WISC-Ⅳが発売された2011年は、スマートフォンで言えば iPhone4の時代です。もちろん、「スマホの進化と知能検査は別では?」という意見もあります。しかし、ここで重要なのは環境の変化に合わせて、求められる認知能力も変化しているという点です。

  • 情報量の増加
  • マルチタスク環境
  • 視覚的情報処理の高度化
  • 抽象的ルール理解の複雑化

こうした変化の中で、子どもがどのような力を使って課題に取り組んでいるかをより正確に捉える必要が出てきました。その結果として、WISC-Ⅴでは「知覚推理」という大きな枠を分解し、より具体的な認知特性を見える形にしたのです。

WISC-ⅣとWISC-Ⅴの最大の違い

指標の数が「4 → 5」に増えた

WISC-Ⅳの指標(4つ)

  • 言語理解指標(VCI)
  • 知覚推理指標(PRI)
  • ワーキングメモリ指標(WMI)
  • 処理速度指標(PSI)

WISC-Ⅴの指標(5つ)

  • 言語理解指標(VCI)
  • 視空間指標(VSI)
  • 流動性推理指標(FRI)
  • ワーキングメモリ指標(WMI)
  • 処理速度指標(PSI)

最大の変更点は、PRI(知覚推理指標)がなくなったことです。ただし、「知覚推理が評価されなくなった」という意味ではありません。

PRIはどうなった? ― 分解されて2つの指標へ

WISC-Ⅳの知覚推理指標(PRI) は、WISC-ⅤではVSI(視空間指標)FRI(流動性推理指標)に分かれました。

WISC-ⅣのPRIに含まれていた下位検査は、

  • 積木模様
  • 絵の概念
  • 行列推理

これらは実際の臨床場面では、

  • 空間構成が得意な子
  • 抽象的推理が得意な子

というように、反応の質が明らかに異なることが多くありました。WISC-Ⅴではこの違いを「視空間能力」と「推理能力」として分離し、より正確に把握できるようになっています。

なくなった下位検査と新しく増えた下位検査

WISC-Ⅴでなくなった下位検査

  • 語の推理(VCIの補助検査)
  • 絵の完成(PRIの補助検査)

WISC-Ⅴで新しく増えた下位検査

  • パズル(VSI)
  • バランス(FRI)
  • 絵のスパン(WMI)

その結果、

  • WISC-Ⅳ:下位検査15個
  • WISC-Ⅴ:下位検査16個

と、1つ増えています。

WISC-Ⅴでは「各指標=下位検査2つ」に統一

WISC-Ⅴでは、基本検査に限るとすべての指標が「下位検査2つ」で構成されています。

指標WISC-ⅣWISC-Ⅴ
VCI32
PRI3
VSI2
FRI2
WMI22
PSI22

この統一により、

  • FSIQ(全検査IQ)の解釈がシンプル
  • 指標間の比較がしやすい

という利点が生まれています。

新しい指標は何を見ているのか?

VSI(視空間指標)

  • 空間認識力
  • 部分と全体の統合
  • 図形構成力

■ FRI(流動性推理指標)

  • 視覚的情報の関係理解
  • 規則性の発見
  • 帰納的・論理的推理力

この2つを分けて評価できることが、WISC-Ⅴの大きな強みです。

知能検査は「診断のため」だけではない

知能は、高い・低いで優劣をつけるものではありません。

しかし、

  • 得意な情報処理
  • 苦手になりやすい課題
  • 学習や生活でつまずきやすいポイント

を把握するためには、非常に有効なツールです。

できることが増えれば、選択肢も増えます。WISC-Ⅴは、その「可能性の広がり方」をより具体的に示してくれる検査だと言えるでしょう。

まとめ

  • WISC-Ⅳから1年以上経っているなら、WISC-Ⅴは受ける価値がある
  • PRIは「視空間」と「推理」に分かれ、理解しやすくなった
  • 支援・配慮・教育的対応を考える上で、WISC-Ⅴはより実用的

検査は「受けたら終わり」ではありません。どう読み取り、どう支援につなげるかが最も重要です。必要に応じて、臨床心理士・公認心理師などの専門職と相談しながら活用していくことをおすすめします。

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