映画『君のクイズ』考察|0文字回答が問いかけた、本当の”正解”とは

映画感想

QuizKnockが大好きな私にとって、この作品は公開前から楽しみにしていた一本でした。クイズ監修がQuizKnock、さらに伊沢拓司さん本人も出演すると知って、「これは劇場で観るしかない」と鑑賞。

上映回数を見るとあまり多くなく、正直そこまで期待値は高くありませんでした。ところが実際に観てみると、予想以上に面白い作品でした。クイズを題材にした映画でありながら、本当に描いていたのは「人がどう生きるか」という人生そのもの。

今回はネタバレありで、『君のクイズ』が描いた”正解”について考察していきます。

※本記事は映画『君のクイズ』のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

映画『君のクイズ』とは?

『君のクイズ』は、君のクイズを原作としたミステリー映画です。監督は吉野耕平。主演を中村倫也、ライバル役を神木隆之介が務めています。

作品最大の謎は、「問題文が一文字も読まれる前に、なぜ正解できたのか。」という”0文字回答”。

一つのクイズだけを軸に物語が進む異色のミステリーです。

あらすじ

クイズ番組の決勝戦。

決勝で対戦した主人公・三島玲央は、対戦相手の本庄絆が、問題文が一文字も読まれる前に解答ボタンを押し、見事に正解する瞬間を目撃します。

当然、カンニングを疑う主人公。

しかし番組関係者や本人は不正を否定し、「本当に答えが分かった」と主張します。

納得できない主人公は、あの日の問題を一から検証し、本庄という人物の人生や記憶、考え方を追い始めます。

やがて彼は、一つのクイズを解くために、他人の人生そのものを理解しようとすることになります。

QuizKnockファンにはたまらない演出の連続

QuizKnockが好きだからこそ、本作は最初から最後まで楽しめました。

伊沢拓司さんが思っていた以上にしっかり出演していて驚きましたし、作品全体からQuizKnockらしさが感じられます。

例えば、

・読ませ押し

・確定ポイント

・「ですが問題」

・口の動きから問題文を読む技術

・パラレル問題

など、普段QuizKnockの動画で当たり前のように見ている文化が自然に物語へ組み込まれています。

口の動きを読んで問題を推測するシーンなどは、「QuizKnockメンバーなら本当にやりそう」と思わず笑ってしまいました。

また、パラレル問題で「日和山」が登場した時は、過去のQuizKnock動画を思い出してニヤリ。

クイズ好きほど楽しめる細かな演出が随所に散りばめられていました。

一つの問題だけで物語を成立させた構成が面白い

この作品で感心したのは、最後まで「0文字回答」という一つの謎だけを追い続ける構成です。

普通のミステリーなら次々と事件が起こります。

しかし本作では、スタジオでの生放送を中心に、回想を挟みながら少しずつ真相へ近づいていきます。

「この一問だけ」で約2時間引っ張れるのかと思いましたが、まったく退屈しませんでした。

クイズというテーマを深掘りするだけでなく、その回答者自身を理解し、自分自身とも向き合うことで初めて答えへたどり着く構成になっていたからです。

クイズを解いているようで、実際には”人”を理解する物語でした。

クイズは知識ではなく「経験」で解く

本作を観ていて特に印象に残ったのは、

経験が知識になり、知識がひらめきを生む

という描き方でした。

逆に、一つの単語から過去の記憶や思い出が連想されることもあります。

心理学ではこれを「エピソード記憶」と呼びます。

知識だけを覚えているのではなく、その時の感情や出来事とセットで記憶されるため、一つの言葉から当時の景色まで思い出せることがあります。

映画ではその過程を映像として表現しており、「人はこうやって答えへたどり着くのか」と納得させられました。

「どこかで間違えた」はクイズプレイヤーらしい思考

主人公が何度も口にする

「どこかで間違えた。」

という言葉。

これはまさにクイズプレイヤーらしい考え方だと思いました。

クイズには必ず正解があります。

だから間違えた時、多くの人は「どこで読み違えたのか」「どこで思考がズレたのか」を振り返ります。

しかし人生は違います。

正解は一つではありません。

劇中で「一緒に探すこともできる」という考え方を知った主人公は、それまでの白黒思考から少しずつ変わっていきます。

正解を一人で探すのではなく、誰かと一緒に考える。

それが彼にとって、一番大きな成長だったのではないでしょうか。

本庄が抱えていた本当の問題

一方で、本庄が抱えていた問題はクイズではありませんでした。

彼を苦しめていたのは、

周囲の期待に応え続けなければならない人生

だったように思います。

もし彼が瞬間記憶能力のような突出した能力を持っていたのだとすれば、幼い頃から「できて当たり前」と扱われてきたのでしょう。

能力があるから期待される。

期待されるから応え続ける。

その繰り返しに疲れ果て、0文字回答という前代未聞の出来事を起こすことで、自らその舞台を降りようとしたのではないでしょうか。

しかし、どこへ行っても、その能力がある限り周囲は彼を放っておきません。

能力とは時に才能であり、呪いにもなり得る。

そんな皮肉も感じさせる人物でした。

「問題は正解に辿り着けるように作られている」

劇中で語られるこの言葉が、本作のテーマだったように思います。

クイズは、正解へたどり着けるように作られています。

人生も同じなのかもしれません。

途中で間違えてもいい。

誤答してもいい。

問題を聞き直し、途中から考え直すことだってできます。

主人公が最後に見つけた答えは、クイズの正解ではなく、「人生は何度でもやり直せる」という希望だったように感じました。

気になった点

個人的に唯一引っかかったのは、国際女性デーの問題です。

主人公は「ひまわり」と誤答し、「確定ポイントを間違えただけ」と説明されます。

しかし、それなら「花」と答えるのが自然ではないでしょうか。

個人的には、単純に「ミモザ」と「ひまわり」を取り違えただけのように見えました。

クイズ作品だからこそ、こういう細かい部分が少し気になってしまいました。

総評

『君のクイズ』はクイズ映画ではありません。

クイズという題材を通して、人を理解すること、人と向き合うこと、そして人生の”正解”とは何かを描いたヒューマンドラマでした。

QuizKnockファンだからこそ気づける小ネタも多く、クイズ好きにはたまらない作品です。

一方で、クイズを知らない人でも、人間ドラマとして十分楽しめる完成度でした。

そして帰宅後、予告でずっと流れていた「ビューティフル〜♪」が頭から離れず、思わずYouTubeで「ママ、クリーニング小野寺よ」を検索してしまったのは、きっと私だけではないはずです。笑

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