――視点の切り替えで意味が反転していく、察しろ系ホラーミステリー(ネタバレあり)
『WEAPONS/ウェポンズ』は、グロあり・笑いありのホラーミステリー作品です。
説明的なセリフや親切な補足はほぼなく、観客に「察してね」と投げてくるタイプなのですが、人物ごとの視点(章立て)と時系列の切り替えによって、あとから出来事の意味がどんどん更新されていきます。
序盤は「意味がわからないことだらけ」なのに、視点が変わると理由がわかっていくのが気持ちよく、怖さと同時に“つながっていく快感”が強く残りました。
そして、ナルト走りは一周回って面白いです。ホラーなのに笑ってしまうのが悔しいのですが、この“笑ってはいけない感じ”も含めて、本作の不穏さを強めているように感じます。
作品情報
- 作品名:WEAPONS/ウェポンズ(2025)
- 上映日:2025年11月28日
- 上映時間:128分
- 製作国:アメリカ
- ジャンル:ホラー/ミステリー
- 監督・脚本:ザック・クレッガー
- キャスト:ジョシュ・ブローリン/ジュリア・ガーナー/オールデン・エアエンライク/オースティン・エイブラムズ/ケイリー・クリストファー ほか
巧みな視点構造――「説明しない」のに、ちゃんと回収する
本作は、出来事を順番にわかりやすく説明する映画ではありません。
人物ごとの視点と、時間の断片を積み重ねていき、あとから整合させていく構造になっています。
そのため序盤は、とにかく「何が起きているのか」が掴みにくいです。
しかし、視点が切り替わるたびに、先に見た場面の意味が少しずつ変化し、「あれはそういうことだったのか」と理解が更新されていきます。
説明は少ないのに、回収はきちんとある。
だから観終わったあとには、怖さだけでなく「なるほど……」という納得感が残りました。
察しろ系の構成が好きな方には、かなり刺さるタイプの作品だと思います。
視点を変えると印象が180度変わる人物描写
先生という存在について
結論から言うと、先生は人間としてクズ過ぎると感じました。ここは正直、揺らがないです。
ただし一方で、子どもに対しては真摯な先生だったとも思います。虐待を疑えるくらい、子どもたちのことをよく見ていました。
作中で「生徒との距離が近すぎる」と責められる場面がありますが、学校現場の先生って、実際このくらい距離が近い人もいますよね。
むしろ、距離が近くないと拾えないサインもある。
だからこそ、この先生が過剰に問題視された背景には、前科や噂といった偏見が混ざっていたのではないか、と感じました。
本作は、善悪を単純に分けず、「見る角度で評価が変わる人間」を意図的に配置しているように思います。
父親の執念――悲しみが“確信犯”に変わる瞬間
失踪した子どもの父親は、最初は心労で仕事が手につかない人物として描かれます。
しかし物語が進むにつれて、誤発注が“うっかり”ではなく確信犯だったことが見えてきます。
目的のために手段を選ばない。
この父親の怖さは、怪異よりもむしろ「正しさ」を理由に行動が過激化していく人間の危うさにあります。
子どもを想う気持ち自体は否定しきれないからこそ、その執念が倫理を踏み越えていく様子は、とても後味が悪いです。
グロ描写はダイレクトで、生理的に刺さる
グロ耐性はあるほうなのですが、粘膜系は別でした。
フォークと目、指、ピーラーの場面は、思わず「痛い……!」と身構えてしまいます。
派手さを狙ったグロではなく、感覚的な痛みを直接想像させるタイプの描写なので、苦手な方は注意が必要だと思います。
この“嫌なリアルさ”が、作品全体の不快感と恐怖を底上げしています。
社会問題の積み上げ――怪異が入り込む土壌としての現実
エイズへの恐怖、同性パートナー、薬物依存、ホームレスなど、アメリカ社会の課題が次々と提示されます。
さらに、不倫や警察の隠蔽まで重なり、ホラーでありながら現実の嫌さがずっと背景に残ります。
殺された人たちは、なんだかんだ一線を越えた悪事をしていた側でもあるため、物語上の因果としては私は納得してしまいました。
ただ、引きちぎられた死体を子どもたちが直で見ているのは、どう考えてもPTSDになりそうです。
とはいえ、洗脳が解けた直後で記憶が曖昧になっている、あるいは意図的に覚えていない可能性もあるのかな、と考えました。
随所に感じる日本“臭”
憑代に身体の一部や所有物を付けて行う呪いの儀式は、日本の「藁人形を五寸釘で打ち付ける」呪いを強く連想させます。
儀式に使う枝が生えていたのも盆栽っぽく、塩で線を引く描写も盛り塩を思い出しました。
ナルト走りまで含めて、日本の表現や文化から着想を得ているのかな……と、つい考えてしまいます。
意図的かどうかは別として、観る側の文化的記憶を刺激する演出だと感じました。
叔母さんの正体――血縁ではなく“寄生する存在”
叔母さんは、血の繋がりがある親族というより、赤の他人がその立場に侵入しているように見えました。
知識や服装が時代錯誤なのも、他者の生気を吸い取って生き続けてきた存在だとすれば、説明がつきます。一体この人は何歳なのでしょう。
これまで寄生しては乗り換えて……を繰り返してきたのなら、相当うまく立ち回ってきたはずです。
それなのに今回は行動が大胆すぎました。家に来た時点でかなり弱っていたように見えたので、時間がなく、大急ぎで大量に必要だったのだと思います。
散りばめられたメタファーが示すもの
授業で寄生虫の話が出てくるのは、叔母さん=寄生存在という主題の補強に見えました。
校長が見ていたテレビのアリも同様で、ラストの「獲物に群がって、バラバラにする」光景と重なります。
この作品は、直接的な説明はしない一方で、比喩(メタファー)によって言いたいことを置いていく作りになっています。
私はこのやり方がとても好きでした。
疑問点――なぜ“関係ない人”まで見るのか
一番気になったのは、叔母さんに直接関わっていない先生や父親が夢で姿を見ていた点、そしてホームレスの人も幻覚として見ていた点です。なぜなのでしょうか。
私は、次のように整理して考えました。
仮説①:接触ではなく「認識」が感染経路になっている
見た、あるいは意識した時点で入り込むタイプの怪異で、噂や恐怖の共有でも成立するのではないでしょうか。
仮説②:町全体に広がる“集団トラウマ”としての像
個別の関係ではなく、同じ恐怖圏にいることが条件となり、夢へ滲み出している可能性です。
仮説③:子どもたちが媒介になっている
洗脳が解けた直後で記憶が曖昧なぶん、無意識のレベルで周囲に影響が広がっているのかもしれません。
説明が少ないからこそ、この余白が考察として一番面白い部分でした。
まとめ
『WEAPONS/ウェポンズ』は、不可解さを積み重ね、視点の切り替えによって回収していくミステリーホラーでした。
強いグロ描写と社会的要素で不快感はしっかりありますが、それ以上に「つながった瞬間の快感」が強く印象に残ります。
察しろ系が好きな方、考察しながら観ることで満足感が高まるホラーを探している方におすすめです。



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