CUBEとは?
1997年に公開され、人気を博した密室スリラー映画のリメイク版。オリジナル版を手掛けたヴィンチェンゾ・ナタリ監督も、クリエイティブ協力としてスタッフに名を連ねている。囚人服を着た六人の男女が、謎の立方体の中で目を覚まし、仕掛けられた罠に襲われながら、脱出を試みる姿を描く。監督は清水康彦。出演は菅田将暉、杏、岡田将生ほか。
あらすじ
突然閉じ込められた男女6人。
エンジニアの後藤裕一(菅田将暉)、団体職員の甲斐麻子(杏)、フリーターの越智真司(岡田将生)、中学生の宇野千陽(田代輝)、整備士の井手寛(斎藤工)、会社役員の安東和正(吉田鋼太郎)。
年齢も性別も職業も、彼らには何の接点もつながりもない。
理由もわからないまま、脱出を試みる彼らを、熱感知式レーザー、ワイヤースライサーや火炎噴射など、殺人的なトラップが次々と襲う。仕掛けられた暗号を解明しなくては、そこから抜け出すことは絶対にできない。
体力と精神力の限界、極度の緊張と不安、そして徐々に表れていく人間の本性…
恐怖と不信感の中、終わりが見えない道のりを、それでも「生きる」ためにひたすら進んでいく。
果たして彼らは無事に脱出することができるのか?!
キャスト・キャラクター
公式ホームページを見て驚きました。
各人物のSNSが設定されていて、おそらく撮影が始まったあたりから、ちゃんと更新がされています。
後藤裕一(菅田将暉)29歳
東京都出身。職業はエンジニア。
家族構成は父親と弟の博人。
頭脳明晰で、謎の部屋に閉じ込められたことを冷静に受け入れ、脱出の糸口を探る。
5人に平等に接するが、中学生の千陽には特別な感情を抱くも本人は気づいていない。
時間が経つにつれ、過去のトラウマと向きあうこととなる。
甲斐麻子/かいあさこ(杏)37才。
出身地不明。職業は団体職員。
家族構成は不明。
非常に冷静沈着な性格で、自分のことはほとんど語らないので、一見何を考えているかよくわからない。
冷たく見えがちだが、5人を見守ってる様子も垣間見える。
越智真司(岡田将生)31才。
千葉県出身。職業はフリーターでコンビニ勤務。
家族構成は両親と妹。
人見知りせず、人懐っこい性格ではあるが、パニックになりやすく変化に弱い。
閉じ込められたことをなかなか受け入れられず、またそれを隠すこともできないので騒ぎ立てる。
自分が世間から虐げられているという意識が強いので、権力者や年上が嫌い。
宇野千陽/ちはる(田代輝)13才。
神奈川県出身。職業は中学生。
家族構成は両親と弟。
元々は明るい性格だったが、中学校で壮絶ないじめに遭い心を閉ざす。
誰のことも信用せず、特に助けてくれない大人に強い嫌悪感を示す。
後藤のことも最初は拒否していたが、少しずつ変化が起こっていく。
井手寛/ひろし(斎藤工)41才
福岡県出身。職業は整備士。
家族構成は妻。
責任感が強く、リーダーシップを取っていくタイプだが、時々暴走しがちで短絡的。
6人の中で唯一部屋に閉じ込められる前の記憶があり、瀕死の妻のために出口を探すが、時間がなく非常に焦っている。
安東和正(吉田鋼太郎)62才
愛知県出身。職業は広告代理店役員。
家族構成は妻と娘。
業界を渡り歩いてきたやり手のサラリーマンだが、出世するためには手段を選ばないため、敵も多い。
心の奥底には罪の意識を抱えている。
がむしゃらに働いてきたので、やる気のない若者や子供が嫌い。
Kazumasa Ando(@and0it_kazumasa)
ネタバレなし感想
CUBEの日本リメイク版とのこと、公開前から楽しみにしていた作品。
オリジナルに忠実と噂だったんだけど…おかしいな?
サイコロステーキ先輩も期待してたんだけどなかった笑
オリジナル版の方は余計なものを削ぎ落としまくって、めちゃめちゃシンプルにして、“今“だけを映してて、容赦のない感じ…それが魅力だった。
一方、日本リメイク版は、言葉通りに“日本版“って感じ。
人間の陰湿さや社会の闇を垣間見せて、登場人物への感情移入しやすくさせてる。
オリジナル版は観終わったあとにたくさんの謎が残るが、日本版のCUBEはほとんどが明らかになっていた。
結論:面白かった。けどオリジナル版の良さは消えてた。
そして、もしかしてキャストイメージしてから脚本書いた?と思うくらい、キャラが抜群に合うキャスティングだった。笑
作品を紐解くためのキーワード
- 素数
「素数」とは1より大きい自然数で、1と自分自身でしか割り切れない数、と定義されている。
例えば、5は1と5でしか割り切れないので素数だが、6は1と6の他に、2と3でも割り切れるので素数ではない。
このようにして、素数は2、3、5、7、11、13、17、19…などと無数に続く。
CUBEでは部屋に3桁の数字が刻まれていたが、素数なのか素数でないのかは、何かを教えてくれているのかもしれない。
- デカルト座標
場所を指定する数字の組のことを「座標」という。平面の場合は(X, Y)の2つで十分だが、CUBEのような立体の場合は(X, Y, Z)の3つの数字が必要になる。
普通の座標はX軸、Y軸、Z軸が直角に交わるため、正確には「直交座標」と呼ばれる。
「デカルト座標」とは、実は普通の「直交座標」の別名だ。
CUBEでは、部屋に3組の数字が刻まれていたが、これは部屋のデカルト座標と何か関係があるのだろうか?
- フラクタル図形
“正方形を3等分して、中心をくり抜く”のように、同じ操作を自分自身に繰り返して得られる図形を「フラクタル図形」という。
大小の似た形が繰り返し現れるため、日本語では「自己相似図形」などと訳される。
CUBEの壁面をよく見ると大小さまざまな正方形が並んでいる。
これは、「シェルピンスキーのカーペット」と呼ばれる有名なフラクタルと似ているようだが、果たしてそれが暗示するものとは…?
選りすぐりの7人
回想シーンを除き、映画の登場人物はたったの7人。
だからこそ、この7人には並々ならぬ期待とプレッシャーがのしかかるが、それをものともしない選りすぐりの実力派で固められている。圧倒的な演技力と個性が光る7人だ。
映画内での最初の犠牲者は、名前も明かされない男。
柄本時生のびくびく顔芸が発揮され、冒頭に大きなインパクトを与えてくれる。
その後は主要人物6人だけで物語は進む。
それぞれ”何か”を抱えており、どこか人間的に欠けている印象。
一見平凡そうだがビクビクした一面もあり序盤はぶつかりギスギスしていた。
だが、出口を探すという同じ目的に向かって、お互いに協力し合い、少しずつ絆が生まれかけてきていた。
そんな時、誰よりも脱出することにこだわり、愛想のない井手(斎藤工)が、千陽を助けようとした後藤(菅田将暉)を助けるために、トラップにより死亡。
視聴者にとっても、少しの間脱出するまでの時を共にした仲であり、愛着が湧いてきていたところで、この6人のうちの最初の犠牲者となってしまう。
井手(斎藤工)は最初、自己中心的な振る舞いが印象的であったため、その最後の姿は対照的であり、短い時間での人間的な成長も感じられた。
何より、井手(斎藤工)がこれまで他のメンバーを引っ張り、余計なことを考える間も無く身体を動かし、とにかく前に進むことができていた。
彼らにとって井手(斎藤工)を失ったことは、船頭を失ったようなものであり、ここから残された5人の気持ちがバラバラになってしまう。
トラップの法則は?トラップの通り抜け方?
中学生の千陽がハッチ通路に書かれた3つの3桁数字の規則性に気づく(が、あれだけ数学に詳しいエンジニアの後藤なら一番最初に考えそうなのに違和感。)
規則性とはトラップのある部屋の数字には、素数が含まれているというもの。その規則性に基づき、端を目指してなるべく一方向へ進むが、トラップ部屋以外には進めなくなってしまう。
その部屋のトラップはハッチ開閉以外の「音」に反応するため、靴をぬいで静かに通り抜けようとする…が、フリーター越智が靴を落として音をたてたことで、後につづく役員の安東がレーザー光線で切り刻まれそうになり足を負傷。
そこから「努力しない若者」を嫌う年配の成功者と「理不尽な社会を築いた大人」を嫌う若者との確執が始まる。
後藤は、ハッチ通路の3組の数字の3桁の計はデカルト座標の「X,Y,Z」を示してると気づく。つまり「001 555 999」なら「1,15,27」と計算できて、最大「27,27,27」までの座標を表す。立方体の各部屋が集まって、最大27x27x27の巨大立方体の建築物だったのだ。
このように類似する形が繰り返される図形を数学的には「フラクタル図形=自己相似図形」という。各部屋の正方形の繰り返し模様は「シェルピンスキーのカーペット」とも呼ばれる。
つまり、3つの数字の合計のどれかが「1」か「27」に達すると、巨大CUBE建造物の端にたどり着ける。
このCUBE建造物のことを理解して行動したはずなのに、最初の部屋に戻ってきたことでみんなの戦意は喪失してしまう。だが、なるべく一方向に進んでいたことから、戻ってきたわけではなく、部屋が動いてるのだと推測し白羽の矢が立つ。
そんな時、中学生の千陽がレーザー光線のトラップ部屋に落ちてしまうトラブル。
後藤(菅田将暉)が救いに行く。その後藤の命を救った井手(斎藤工)はレーザーから逃げ切れず、6人の中では最初の犠牲者となる。
登場人物たちが抱える背景
最初の犠牲者となった井手には、命の短い妻のために早くCUBEから脱出したかったという背景があった。
後藤は、父に身体的虐待を受けながらも我慢して育った。しかし、後藤の弟の博人は虐待に耐えられず、兄の「俺のようにがんばれ」の一言にがっかりして自殺。後藤は差し出した手を引っこめた事を後悔し、トラウマに。
後藤は、中学生の千陽を持ち上げる時にも、トラウマがフラッシュバックして手を引っ込めてしまったため、井手が引き上げることになったのだ。
(その際、千陽の手首にはひどい外傷あとがあったので、いじめか虐待の可能性が高そう。)
コンビニバイトの越智は、上から目線の店長と好き放題言う中高生の顧客にはさまれたストレスで精神崩壊寸前。
役員の安東は、その地位につくために裏切りや不正を繰り返したと告白し、罪の意識はあるが勝つためには必要だと自己弁護。
何も語らない麻子(杏)以外の5人の共通点は「この立方体から外に出ても、つらい現実が待ってるだけ」という点。
キャラ同士の接点はなさそうだった。
役員の安東は若者を嫌ってるわりに、キレてる越智になぜか気づかず殺害される。この2人を隔離して一緒に行動させたのも黒幕のしわざ。
また、過去に閉じこめられた人がヒントを書いた部屋にトラップ発動させたのも黒幕。
皆と合流した越智は、わざと素数のある部屋へみんなを導く。そこで越智の本性を見ぬいた後藤とダラダラもめるが、なぜかトラップが発動しない。この時トラップを止めてたのも黒幕だろう。
この時点で黒幕は「誰を生き残らせるか決めてた」と考えられる。
つまり、中学生の千陽だけトラップ部屋から脱出させた後、トラップを本格発動し、まず越智を血祭りに。千陽を逃した後藤も微妙に間に合わず犠牲となる。
最終的に出口から元の世界へ向かった生き残りは、中学生の千陽だけ。
元の世界へ戻りたいという願望の強さで選ばれたのかもしれない。
黒幕の正体は
千陽を見送った黒幕の正体は、アンドロイドの甲斐麻子(杏)。
会話しないし発音もロボットぽく無機質なので、察しが良い人は映画開始数分で気づいたと思う。
最後にメンバーの結末とデータが表示されたが、死んだと思われた後藤(菅田将暉)は「CONTINUED」と表示され、どこかの部屋で目覚めていた。
甲斐麻子は新たに集められた人達の部屋に登場し「あなた達は何者?」と言ってゲーム開始。
残念なリメイク作品
オリジナル版『CUBE』は名作映画とはいえ、観てない若い世代も増えてるので、リメイクすること自体には賛成。
ただ、肝心なストーリーはグダグダで、長い会話中は時間が止まるご都合主義にはとても残念だった。
より現代的な「世代間格差」「持てる者と持たざる者のすれ違い」等をテーマに描いた点は良かったが、オリジナル版のサスペンスやスリラー要素を完全に取り払ったので、緊張感がなくなっている。
評価できる点もいくつかあるが、どれも邦画っぽい良さ。SNSを更新しているところとか。
また、部屋にいる人の感情の起伏によって部屋全体の色が変化していたのは面白い表現と思った。
落ち着いている時はブルーだが、怒りや憎悪等おおきく感情が動くと、赤く変わる。
まるでCUBEそのものが生きているようだった。
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