子どもの障害受容とは何か

心理・考察

― 親と子が「その子らしさ」と出会うまでの心理プロセス ―

はじめに

「障害受容」という言葉を聞くと、“障害を認めること”“諦めること”のように、どこか重く、冷たい印象を抱く方も少なくありません。

しかし、臨床の現場で多くの保護者と関わってきた立場からお伝えしたいのは、障害受容とは、決して一度きりで完結するものではなく、感情が何度も揺れ動く“過程”であるということです。

この記事では、

  • 子どもの障害受容とは何か
  • 親がたどりやすい心理的プロセス
  • 受容できない自分を責めてしまう苦しさ
  • 専門職として大切にしている視点

これらを、できるだけ丁寧に言葉にしていきます。

今まさに戸惑いや不安の中にいる方にとって、
「今の気持ちのままでいい」と思える時間になれば幸いです。

障害受容とは「理解」や「諦め」ではない

まず大切な前提として、
障害受容=障害を好きになること、前向きになることではありません。

障害受容とは、

  • この子の特性を含めて
  • 現実を現実として見つめ
  • その子に合った関わり方を探し続ける姿勢

その総体を指します。

つまり、「受け入れたからもう悩まない」という状態ではなく、
悩みながらも、その子と一緒に生きていく選択をし続けることなのです。

親がたどりやすい心理的プロセス

障害受容の過程は、人によって異なりますが、
多くの保護者に共通して見られる心理の揺れがあります。

違和感・気づきの段階

  • 他の子と何か違う気がする
  • 育てにくさを感じる
  • 周囲から指摘されてモヤっとする

この段階では、
「気のせいであってほしい」という思いと、
「何かおかしいのかもしれない」という不安が同時に存在します。

否認・混乱の段階

診断や専門機関の言葉を前にして、

  • 「うちの子に限って」
  • 「まだ小さいから」
  • 「成長すれば追いつくはず」

そう思いたくなるのは、自然な心の防衛反応です。これは現実から目を背けているのではなく、心が一気に壊れないためのクッションとも言えます。

怒り・自責・悲しみの段階

次に訪れやすいのが、

  • どうしてうちの子が
  • 私の育て方が悪かったのでは
  • 周囲と比べてしまう苦しさ

という、感情の嵐の時期です。

この段階は非常につらく、同時に最も誰にも見せにくい感情でもあります。

しかし、この感情を通らずに「受容」に進むことはほとんどありません。


試行錯誤と再構築の段階

少しずつ、

  • この子に合う関わり方は何か
  • 何ができて、何が苦手なのか
  • 支援をどう使えばいいのか

といった、現実的な視点が戻ってきます。

ただし、この段階に入っても、再び否認や悲しみがぶり返すことは珍しくありません。

「受容できない自分」を責めてしまう苦しさ

多くの保護者が、こんな思いを抱えています。

  • いつまでも受け入れられない自分はダメな親
  • 他の親はもっと前向きなのに
  • 子どもに申し訳ない

しかし、ここで強くお伝えしたいのは、

受容できない時期があること自体が、愛情の証でもあるということです。本当にどうでもよければ、こんなにも悩み、揺れ、考え続けることはありません。

障害受容は「一直線」ではない

障害受容は、よく階段や直線で表されますが、実際の心の動きは波のようです。

  • 入園・入学
  • 学年が上がるとき
  • 思春期
  • 進路選択

その都度、「またできないこと」に直面し、「もう受け入れたはずなのに」と苦しくなることがあります。これは後戻りではなく、成長に伴う再調整です。

子ども自身の障害受容という視点

忘れてはならないのが、
子ども本人もまた、自分の特性と向き合っていく存在であるということです。

親が先回りして全てを説明しすぎると、かえって子どもの混乱を招くこともあります。

大切なのは、

  • 年齢や理解力に応じて
  • 困りごとを「性格」ではなく「特性」として伝える
  • できない理由と、工夫の余地を一緒に考える

という姿勢です。

専門職として大切にしていること

心理職として関わる中で、私が特に大切にしているのは、

  • 受容を急がせない
  • 前向きさを押し付けない
  • 「つらい」という感情を否定しない

という点です。

「でも、いいところもありますよね」
「前向きに考えましょう」

これらの言葉は、タイミングを誤ると
支えではなく、孤立を深める言葉になってしまいます。

障害受容とは「その子らしさ」を見つけ直す旅

障害受容とは、

  • 理想の子ども像を手放し
  • 目の前の子どもを見つめ直し
  • 何度も揺れながら関係を築いていくこと

だと言えるでしょう。

それは決して簡単でも、きれいでもありません。それでも、「この子と一緒にどう生きるか」を問い続けること自体が、受容の真っただ中にいる証なのです。

おわりに

もし今、

  • 受け入れられない自分を責めている
  • 先が見えず苦しくなっている
  • 他の家庭と比べてしまう

そんな気持ちを抱えているなら、
どうかこう思ってください。

あなたは、もう十分に向き合っています。

障害受容に「正解」も「期限」もありません。
揺れながら、立ち止まりながら、また進む。それでいいのです。

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