今回は 臨床心理士 という資格について「臨床心理士って結局なにをする人?」「どうやってなるの?」「試験は?」「更新って大変?」まで、できるだけ分かりやすく、でも“薄くならない”ように詳しくまとめます。
さらに今回は、私自身の取得ルート(大学〜大学院〜実習〜受験〜就職)も具体的に書きました。これから目指す方の不安が少しでも減ればうれしいです。
臨床心理士とは?
臨床心理士は、心理学(臨床心理学)に基づく知識と技術を用いて、心の問題や生きづらさ、対人関係の悩み、発達・適応の課題などに専門的に関わる「心の専門職」です。
医師のように診断や投薬を行う立場ではありませんが、心理検査・面接(カウンセリング)・心理療法・関係機関との連携(コンサルテーション)など、心理学的な方法で支援します。
臨床心理士ができること/できないこと
「カウンセラーって何をする人?」がふわっとしたままだと、臨床心理士の仕事は誤解されやすいです。ここで一度、整理します。
できること(例)
- 心理アセスメント(見立て)
心理検査・面接・観察・情報整理を通して、「何が起きているのか」「何が負担で何が支えか」「どんな支援が合いそうか」を立体的に理解し、支援方針につなげます。 - カウンセリング/心理療法
対話を通して気持ちや考え、行動のパターンを整理し、回復や適応を支えます。技法(認知行動療法、家族療法、遊戯療法など)は、必要に応じて選びます。 - コンサルテーション(周囲の大人への支援)
本人だけでなく、保護者、教員、職場の上司や支援者に「関わり方」「環境調整」「支援体制」を提案・整理します。 - 多職種連携
医療なら医師や看護師、福祉ならケースワーカー、教育なら学校組織などと協働します。
できないこと(例)
- 医学的診断(診断名をつける)
- 投薬や処方
- 「この人はこういう人」と断定して裁くこと
臨床心理の基本は、断定ではなく“理解と支援”です。
臨床心理士に求められるもの(4つの基本業務)
臨床心理士の専門業務は、協会でも主に「査定/面接/地域援助/研究」の枠組みで説明されています。
心理査定(アセスメント)
臨床心理では「診断」より 査定(アセスメント) という言葉がよく使われます。
心理検査だけでなく、面接での語り、生活背景、学校・家庭・職場の状況なども統合して、「この人にとっての困りごとの構造」を整理します。
ここで大切なのは、“分類”がゴールではないこと。
支援に繋がる形で、「本人と周囲が次の一歩を踏み出せる理解」にするのが査定です。
心理面接(カウンセリング/心理療法)
心理面接は、臨床心理士とクライエント(相談者)の関係性の中で、共感・理解・納得が育ち、心の整理や回復に向かうための場です。
「話を聴く」だけでなく、相談者の状態やニーズに合わせて、面接の進め方・焦点・技法の選び方が変わります。
地域援助(連携・予防・仕組みづくり)
個人への支援だけでなく、学校・職場・地域などコミュニティ全体を視野に入れた支援も含まれます。
現場では、支援が回るように情報を整理し、関係機関の役割分担を整え、本人のプライバシーと安全を守りながら支援体制を作る――
そんな“交通整理役”になる場面も少なくありません。
調査・研究(自己研鑽)
心理臨床はケースごとの個別性が高い領域です。
だからこそ、事例検討、研修、スーパービジョン、研究活動などを通して学び続ける姿勢が求められます。
どこで働くの?(領域別の仕事内容)
臨床心理士の活動領域は、教育・医療・福祉・司法・産業など多岐にわたります。
教育分野(学校・教育相談)
- 不登校、いじめ、友人関係、学業、進路、発達の課題などの相談
- 保護者面接
- 教員へのコンサルテーション(関わり方、学級での工夫、支援体制)
- 必要に応じた他機関連携
医療・保健分野(病院・クリニック・保健センター等)
- 心理検査(知能・発達・人格・認知など)
- 心理療法、カウンセリング
- 多職種連携(カンファレンス等)
- 乳幼児健診、発達相談に関わることも
福祉分野(児童・障害・高齢・女性など)
- 児童相談、障害、DV、高齢などの課題への心理支援
- 施設・相談機関での面接、評価、ケース会議
- 支援者(職員)へのコンサルテーション
司法・矯正分野(家裁・鑑別所・更生)
- 心理検査・調査
- 面接(更生支援、再発防止)
- 関係機関との連携
産業分野(企業・EAPなど)
- メンタルヘルス相談、復職支援
- 職場へのコンサルテーション(業務調整、上司支援、再発予防)
- 研修(セルフケア、ストレス、ハラスメント等)
働き方のリアル(常勤・非常勤・掛け持ち)
臨床心理士は領域だけでなく、雇用形態でも生活が大きく変わります。
- 常勤(正規):安定しやすい。責任範囲が広く、記録や会議等も含めて業務量が増えやすい。
- 非常勤(時間給):学校・医療機関などで多い。複数先を掛け持ちして調整する人も多い。
- 委託/業務契約:研修講師、EAP、相談業務など。
「自分が大事にしたい働き方(安定/自由度/専門性の深さ)」を決めると、領域選びもしやすくなります。
給料は?(統計の目安と“現実のブレ”)
収入は、常勤か非常勤か、領域(医療・教育・福祉・産業など)、自治体か民間か、経験年数、掛け持ちの有無で大きく変わります。
公的データの目安として、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、「カウンセラー(医療福祉分野)」の統計として
賃金(年収)430.2万円(全国)
が掲載されています。
さらに、同ページには時間当たり賃金(全国のみ)として
一般労働者 2,186円/短時間労働者 1,641円
が示されています。
※注意:この数値は「臨床心理士だけ」を切り出した統計ではなく、職種カテゴリの集計です。実際の給与は、勤務先・雇用形態・地域で幅が出ます。
領域で収入感が変わりやすい理由(現実の話)
- 学校領域(SCなど):非常勤が多く、時給制になりやすい。コマ数に限界がある一方、掛け持ちで調整しやすい。
- 医療領域:常勤枠が取れれば安定しやすいが、非常勤中心だと「枠(外来数)」に左右されやすい。
- 産業領域:企業内やEAP、研修など、仕事の作り方次第で単価が変わりやすい(ただし求められる説明力・ビジネススキルも増えやすい)。
- 福祉・行政(児童相談所等):自治体の給与体系に乗るケースが多く、役割が広い分、責任も重い。
「臨床心理士の年収はいくら」と一言で言い切れないのは、こういう構造があるからです。
なるためにはどうしたらいいの?
臨床心理士になるには、原則として大学卒業後、指定大学院などで所定の課程を修了し、資格審査(試験)を受ける流れになります。
私の取得ルート(体験談)
私は、大学は一般的な心理系学科を卒業し、大学院は 臨床心理士指定大学院(第一種) に進学しました。
大学院では学外実習として 適応指導教室 と 保育園 に行きました。
現場に入ると、教科書だけでは分からない「支援が回る仕組み」や「関係づくりの難しさと面白さ」を体感します。今の仕事にも、この時期に得た感覚がずっと活きています。
また在学中は、大学院に併設された相談室でケースを担当し、
- 面接の組み立て
- 記録の書き方
- スーパービジョンでの振り返り
を繰り返し積み上げました。
大学院修了後はいったん、出身大学の 学生相談室 で受付などを担当しながら、臨床心理士試験の勉強を進めました。
そして、大学院修了後に受験して 一発合格。
資格取得後(大学院修了して2年目)からは、児童相談所で児童心理司(児童心理司としての業務)として働き始めました。
児童領域は、本人支援だけでなく、保護者支援・関係機関との連携・会議での見立て共有など、「支援が現実に回る形に整える」力が特に求められる場面が多いと感じています。
臨床心理士資格の受験内容(一次・二次)
協会の案内では、資格審査は 一次(筆記)+二次(口述面接) の構成です。
一次試験(筆記)
一次は同日に2つ実施されます。
- 多肢選択方式試験(マークシート):100題/2時間30分
- 論文記述試験:1題/1,001〜1,200字/1時間30分
二次試験(面接)
二次は 口述面接試験で、一次の多肢選択方式試験が一定水準に達した人が対象とされています。
勉強の進め方(私が意識したこと)
ここは、これから受験する人に一番役立つと思うので、実用寄りに書きます。
多肢選択:広く・抜けなく
得意分野だけで戦うと、どうしても穴が出ます。
基礎心理(発達・学習・認知・人格など)と臨床(査定・面接・倫理・関連法規)をまんべんなく、が現実的に強いです。
論述:知識の羅列ではなく「臨床家の視点」
論述は、専門用語を詰め込むよりも、
- どうアセスメントするか
- どう支援方針に落とすか
- 倫理・連携をどう考えるか
が伝わる書き方が強いです。
面接:姿勢・言語化・現実感
面接は「正解っぽいこと」を言うより、
「自分は何を見て、どう考え、どう関わったか」を、現場感のある言葉で説明できる方が通ります。
普段から、実習やケースを“振り返って言語化する”習慣が、結局いちばん効きます。
資格取得後も続くこと(更新制度)
臨床心理士は、資格取得後も研鑽を積み続けることが求められ、5年ごとに更新審査があります。
協会の案内では、5年以内に、定められた教育研修機会のうち ①②のいずれかを含む3項目以上に参加(発表)し、計15ポイント以上を取得して申請する仕組みです。
【現実的なコツ】
「気づいたら足りない」が起きやすいので、年に数回、計画的に研修を入れておくとラクです。
児童相談所で働く心理職の仕事(児童心理司の実際)
ここからは、私の現在の領域に近い「児童相談所×心理職」について、一般化して書きます。
(自治体の資料でも、児童相談所には児童心理司を置くことが標準とされる旨が示されています。)
児童心理司の主な役割
児童心理司は、子どもや保護者の相談に応じ、面接・心理検査・観察などを通して心理的側面から評価や支援を行う職種として紹介されています。
具体的には、たとえば以下のような仕事が中心になります(勤務先で比重は変わります)。
- アセスメント(見立て):子どもの状態理解、親子関係や環境の把握、必要な支援の整理
- 心理検査・観察・面接:子どもの言葉にならないサインを読み取り、支援方針に繋げる
- 保護者支援:保護者の困り感を整理し、関わり方や支援資源を提案する
- 関係機関との連携:学校、医療、施設、地域などと情報整理・役割分担
- 一時保護や施設等へのアウトリーチ:必要に応じて家庭・学校・施設等に訪問する説明もあります
「心理職としての強み」が出る場面
児童相談所は、多職種連携が前提の現場です。
その中で心理職は、
- ケースの“背景”を整理して言語化する
- 本人の反応や関係性のパターンを、支援方針に落とす
- 支援者側が抱えやすい感情(しんどさ)も含めて整理する
などで、チームの判断を支える役割になりやすいです。
よくある質問
Q1. 臨床心理士と公認心理師、どっちがいいの?
行きたい領域の求人要件で変わります。
迷ったら、「働きたい領域の募集要項」を先に見て、必要要件から逆算するのが確実です。
Q2. 更新ってお金がかかる?
研修費、学会費、移動費などがかかることがあります。オンライン研修等もあるので、計画と選び方次第で負担は調整できます(最新の扱いは協会案内の確認が安全です)。



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