―「待つ」だけでは足りない、発達を支える本当の関わり方―
「同い年の子はもうおしゃべりしているのに、うちの子はまだ単語が少ない」
「意味はわかっていそうなのに、言葉として出てこない」
「こちらの言うことは理解しているけれど、返事が指差しやうなずきばかり」
言葉の遅れに気づいたとき、多くの保護者は不安になります。
そして同時に、こんな言葉を周囲からかけられることも多いのではないでしょうか。
- 「そのうち話すようになるよ」
- 「男の子は遅いって言うし」
- 「焦らなくていいんじゃない?」
確かに、“待つ”ことが大切なケースもあります。
しかし、ただ何もしないで待つことと、発達を理解した上で適切に関わりながら待つことは、まったく別物です。
言葉は、自然に「年齢が来たら勝手に出てくるもの」ではありません。
周囲とのやりとり、感情の共有、身体感覚、安心感など、たくさんの土台の上に積み重なって育っていくものです。
この記事では、
「言葉が遅い子」に対して、今日から家庭で意識してほしい3つの関わりを、心理学・発達心理学の視点から丁寧に解説します。
そもそも「言葉が遅い」とはどういう状態?
まず大前提として、「言葉が遅い」と一言で言っても、その背景はさまざまです。
- 語彙の量が少ない
- 二語文・三語文が出ない
- 発音が不明瞭
- オウム返しが多い
- 言葉は少ないが理解力は高い
- 身振りや表情でのコミュニケーションが多い
言葉の発達には個人差があり、単に「話す量」だけで判断できるものではありません。
重要なのは、「どの段階でつまずいているのか」を見極めることです。
そのために大切なのが、
言葉の前に育つ力に目を向けることです。
言葉は“いきなり”出てくるものではない
私たちはつい、「話す=言語能力」と考えがちですが、実際には言葉の前段階があります。
言葉の土台になる力
- 人と視線を合わせる
- 気持ちを共有する
- 音やリズムを楽しむ
- 身体感覚を通して世界を知る
- 安心できる大人との安定した関係
これらが十分に育っていないと、
「理解はしているけれど言葉にできない」
「話す必要性を感じない」
という状態になりやすいのです。
では、家庭でできる具体的な支援とは何でしょうか。
言葉が遅い子にやってほしいこと①
「正しく話させよう」としない
❌ よくある関わり
- 「ちがうでしょ、◯◯って言うの」
- 「ちゃんと言ってから渡すよ」
- 「ほら、ママの真似して」
一見、言葉を教えているように見えますが、
この関わりは子どもの発語意欲を下げてしまうことがあります。
なぜ逆効果になるのか?
言葉が遅い子の多くは、
- 言いたいことはある
- でもうまく言葉にできない
- 伝わらない経験が増える
- 話すのがしんどくなる
というサイクルに入っています。
そこに「正しさ」を求められると、
「間違えたらダメ」「言えないとダメ」というプレッシャーが強くなります。
結果として、
- 無言になる
- 指差しだけになる
- 要求自体を諦める
という行動につながることも少なくありません。
✔ 大切なのは「伝わった経験」
言葉の発達において最も重要なのは、
「言葉じゃなくても、伝わった」という安心感です。
たとえば、
- 指差し →「あ、りんごが欲しいんだね」
- 「あー」→「それ取りたかったんだね」
- 表情 →「困ってたんだね」
このように、子どもの意図を汲み取って言葉にして返すことが、発語の土台を作ります。
これは心理学でいう「情動のラベリング」に近い関わりで、
子どもは「自分の気持ちには名前がある」と学んでいきます。
言葉が遅い子にやってほしいこと②
「言葉を教える」より「やりとりを増やす」
言葉が遅いと、
「単語を増やさなきゃ」「言葉を覚えさせなきゃ」と考えがちです。
しかし、言葉は暗記で増えるものではありません。
言葉は「やりとりの中」で育つ
発達心理学では、言語獲得は
一方的なインプットではなく、相互的なコミュニケーションの中で起こるとされています。
つまり、
- 絵本を読み聞かせるだけ
- 単語カードを見せるだけ
では不十分なのです。
✔ おすすめなのは「ターンテイキング」
ターンテイキングとは、
**「あなたの番 → わたしの番」**というやりとりのこと。
例:
- 子どもが音を出す → 大人が真似する
- 子どもが投げる → 大人が投げ返す
- 子どもが見る → 大人も同じものを見る
この「交代」の経験が、会話の原型になります。
言葉が出ていなくても、
- 表情
- 声
- 身体の動き
すべてが立派なコミュニケーションです。
言葉が遅い子にやってほしいこと③
「言葉以前の感覚」を大事にする
実は、言葉が遅い子の中には
感覚の偏りを抱えている子も少なくありません。
- 音に敏感
- 触られるのが苦手
- 体の使い方がぎこちない
- 落ち着いて座れない
これらは一見、言葉と関係なさそうに見えますが、
実は深くつながっています。
なぜ感覚が言葉に影響するのか?
言葉を話すには、
- 呼吸
- 口や舌の動き
- 姿勢の安定
- 注意の集中
といった身体的な基盤が必要です。
感覚が過敏・鈍麻だと、
- 体に意識を向ける余裕がなくなる
- 音や刺激に圧倒される
- やりとりに集中できない
結果として、言葉の発達も足踏みしやすくなります。
✔ 家庭でできる感覚サポート
- ブランコ・滑り台などの遊び
- 抱っこやスキンシップ
- リズム遊び、手遊び歌
- 一緒にゴロゴロする時間
「遊び」に見えるこれらの関わりが、
実は言葉の発達を強く支えています。
「早く話させたい」より大切な視点
保護者が一番つらいのは、
「このまま話さなかったらどうしよう」という不安です。
でも、言葉は結果であって、目的ではありません。
大切なのは、
- 伝えたい気持ちがあること
- 誰かとつながりたいと思っていること
- 安心できる関係の中にいること
これらが育っていれば、言葉は必ず後から追いついてきます。
まとめ:言葉が遅い子に本当に必要なこと
最後に、この記事のポイントをまとめます。
言葉が遅い子にやってほしいこと3選
- 正しく話させようとしない
- 言葉よりやりとりを大切にする
- 感覚・身体の土台を整える
言葉は「教えるもの」ではなく、
関係性の中で自然に育つものです。
焦らなくて大丈夫。
でも、放っておかなくていい。
子どものペースを尊重しながら、
今日からできる関わりを、少しずつ積み重ねていきましょう。



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