被虐児の成れの果てを描く『死刑にいたる病』

映画考察

あらすじ

史上最悪の連続殺人鬼からの依頼―

それは一件の冤罪証明だった。

ある大学生・雅也のもとに届いた一通の手紙。

それは世間を震撼させた稀代の連続殺人鬼・榛村からだった。

「罪は認めるが、最後の事件は冤罪だ。犯人が他にいることを証明してほしい」。

過去に地元のパン屋で店主をしていた頃には信頼を寄せていた榛村の願いを聞き入れ、 事件を独自に調べ始めた雅也。

しかし、そこには想像を超える残酷な事件の真相があった―。

映画の公式サイトから引用しました。

映画『死刑にいたる病』オフィシャルサイト
史上最悪の連続殺人鬼(シリアルキラー)からの依頼は、たった1件の冤罪証明だった―/阿部サダヲ 岡田健史/監督:白石和彌/脚本:高田亮

虐待児が望むもの

虐待受けた子はだいたい問題行動ばかりで、”可哀想な子”として扱ってもらえないって話がリアルで良かった。

その上で、榛村(阿部サダヲ)は、どうしたら相手が喜ぶかをよくわかってた。

虐待を受けていたからこそ、親にどう思われるかに敏感で、その能力に特化されたんだと思う。

雅也と金山が元獲物で済んだのは、榛村の獲物の好みである”黒髪で真面目で頭が良い子“じゃなかったからだけど、冷静に考えたらあの2人は被虐児だったから必然かもしれない。

虐待を受けていた子は成績が悪いことが多い。

なぜなら、勉強やってる場合じゃないから。

雅也の欲しいものを的確に与えていく榛村。

雅也が理想の父を求めるのなら、自分がその立場になれば操りやすいと踏んだのだろう。

ケアされなかった被虐児の成れの果て

榛村が殺す相手に選ぶ条件である「黒髪で真面目で頭が良い」というのは、榛村を虐待した実母の面影と推測できる。

そして、同じような見た目の人を拷問して殺すことでしか自分の苦しみの発散する方法がなかったのだろう。

他人に取り込むのが上手いってことは、それだけ本当の自分を隠してきたってこと。

抑圧してきたものが一気に爆発した結果、殺人鬼が生まれた。

ターゲットが高校生くらいの子の年代なのは、もしかしたら榛村の実母は小中学生の時に榛村を産んでいて、ちょうど榛村の幼児期に母が高校生くらいだったのかもしれない。

榛村は母から虐待を受けていたけど、爪が綺麗だったことだけが母の良い印象として残っていた

だから、母の良いところ(=爪)だけを集めていたんじゃないかな。

雅也の母も被害者

「決められない」が口癖の雅也の母、幼少期の被虐歴もしくはDV歴があるだろうなと思ったら案の定。

雅也の母が雅也に「堕ろせなくて」って言うの、単なる存在の否定に他ならなくて、究極の心理的虐待だと思う。虐待の世代間連鎖が過ぎる場面。

ちなみに壁土食べるのは異食っていうストレス反応だし、妊娠したから追い出したって一番やっちゃいけないことなんだけど、被虐児支援のため養子にしてた活動家さんヤバい人過ぎない?

どこまでも榛村の掌の上

最初に出てきた時から加納灯里も”真面目な黒髪”だなぁと思ってたら、やっぱり榛村の元獲物

雅也と同じように頭が良くないから候補から外れたパターンと考えられる。

加納灯里の登場シーンにはすごい違和感があって、雅也を気にしている割には、扱いは雑な感じで、どこまでも自分本位だった。

なんとなく気持ち悪い感じ。

きっとこの子も被虐児なのかな。

最後の最後まで、榛村から逃れられないところにゾクっとくる。

感想とまとめ

最初のシーン、花びらを川に撒いてるのかと思ったら、あれ爪だったのね。

冒頭に持ってくるに素晴らしい演出だった。

雅也役の子(水上恒司)には、松山ケンイチみを感じた。

踏んだり蹴ったりにもグッと堪える表情とか、ブチギレたときの”普段大人しい子がキレると狂気”って感じが似てるし、上手い。今後の活躍に期待。

雅也は榛村の術中にハメられていくけど、視聴者としてはそこが面白かった。

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