Amazon prime videoで映画『ヴィジット』を鑑賞しました。
8月27日からシャマラン監督の新作『OLD(オールド)』が上映開始しましたが、
映画をみた方、これからみる方は、ぜひこの作品も見てください。
ここからはネタバレありの考察になりますのでご注意ください。
あらすじ
祖母の家には奇妙な「3つの約束」があった。 第一の約束 楽しい時間を過ごすこと 人里離れた祖母の家へ 休暇を利用して祖父母の待つペンシルバニア州メイソンビルへと出発した姉弟。 都会の喧騒から離れて、田舎での楽しい1週間を過ごす予定だった―その時までは。 第二の約束 好きなものは遠慮なく食べること 奇妙な「3つの約束」とは? 優しい祖父と、料理上手な祖母に温かく迎え入れられ、母親の実家へと到着した2人。 しかし出会えた喜びも束の間、就寝時、完璧な時間を過ごすためと、 奇妙な「3つの約束」が伝えられる。 第三の約束 夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと この家は、何かがおかしい 夜9時半を過ぎ、異様な気配で目が覚める2人。部屋の外から聞こえるただ事ではない 物音に恐怖を覚えた彼らは、絶対に開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまう。 そこで2人が目にしたものとは――? 挙動がおかしい祖母/呼びかけに無反応な祖父/カギがかけられた納屋/ 尾行してくる男/消えた隣人/「ここには“暗闇さん”がいるの」/夜中に響く騒音/ 床下で襲ってくる女、――なぜ?
B級映画と思いきや
ドキュメンタリー映画のようなインタビューシーンで始まる。
姉弟が祖父母宅へ1週間泊まりに行く様子を、
姉がカメラで映像を取りながらナレーションを付け、物語は進んでいく。
この撮り方は物語の最後まで徹底されていて、作品への没入感は格段に上がる。
また、どうということのない風景を光と構図、カメラワークの表現だけでゾワゾワした画にするのが非常に上手。
絶対ここ来るって所で何も来ないのもある意味予想ができなくてドキドキ。
じわじわ怖くなる異常さ
大人用オムツをため込む祖父や、全裸で徘徊する祖母の姿などは、異常さが際立つシーンである。
姉はそれを祖父に話し、
弟は祖母に見つかる形であるが話すが、
理由をつけられて納得されられている。
姉は”老人だから“や”偏見はいけない“等言い、祖父母を信頼しようと努力している。
一方で、弟はすぐにこの家の異変に気がついている。
弟は強迫性障害を抱えていることもあり、感覚的に敏感で繊細な気質を持っていると推測され、
だからこそ周囲の空気の異変にいち早く気がつくことが出来たのだろう。
弟はカメラを設置しようと言ったり、母へ祖父母がおかしいと訴えようとしたり、
すぐに祖父母を”敵”と認識した様子。
ストレスの出方はそれぞれ
『父が家を出て行った』ことで
心に大きなダメージを負った姉弟だが、
そのストレスの出方はそれぞれ。
姉は鏡で自分の顔を見れなくなり(=自分自身と向き合えない)、父を恨むことで自分を保っている。
弟は原因を自分の行動であると考えてしまい、強迫性障害として症状に現れている。
人生を変える一週間
この作品は祖父母宅へ訪れた1週間を、姉の持っているカメラで撮影した映像だけで構成されている。
日曜日に到着し、土曜日に帰るスケジュール。
日を追うごとに少しずつ情報が増えていく。
祖父母らの行動、家や周辺の様子、そして来客者。
姉が来客者を祖父母に繋いでいればまた違った展開になっていただろうが、
おそらくそうならないように仕組んでいたのだろう。
祖父母がボランティアで相談員をしている病院から来た人たちは、
彼らが土曜日の予定に現れなかったことや、病院で騒動があったことを告げる。
この騒動は、おそらく精神科患者の脱走事件があったことを指している。
祖母がオーブンの掃除を姉にお願いするシーンが2回ある。
何かあると思わせて緊張を誘うシーンであるが、
閉じ込められそうな状況を姉が受け入れるかどうかで、
祖母が姉からの信頼を図っているようにも見える。
木曜、姉も祖父母の異常さに気がつき、居間に隠しカメラを設置。
しかし、その夜徘徊する祖母に発見され、祖母は大きな包丁を持って子どもたちの部屋に行くが、
鍵がかかっていて難を逃れる。
金曜の朝、映像を見た姉弟。
カメラの設置がバレてしまったことで、
姉弟が祖父母を怪しんでいることが祖母にバレてしまっている。
さらに、祖母が姉弟を殺そうとしている様子をわざとカメラに映していることから、
殺意を明確に姉弟に知らせている。
姉弟は母へすぐ迎えに来てくれるよう懇願。
姉弟は必死で訴え、Skype越しに母へ祖父母を見せる。
すると、姉弟らが祖父母であると思っていた2人はまったく別人であったと判明、愕然とする。
外で祖父母が話していた(おそらくカメラの件を伝えた?)後から
姉弟は外に逃げようとしても何かと話をつけられ逃げられない状態に。
行かないように言われていた地下室に本物の祖父母が監禁されていると考えた姉は地下室へ向かうが、そこには本物の祖父母の遺体と写真、そして精神科病院の患者の服があった。
祖父母がボランティアをしていた精神科病院の患者が、祖父母を殺し、成り代わっていたのだとわかる。
遺体も新しく、殺害されたのはそのボランティアに行く日(土曜)の直前であろう。
祖母になりすましていた女性は、自分の子どもたちを殺し、その死体をスーツケースに入れて湖に投げ捨てた過去があり、本当の祖父母から、可愛い孫たちが会いに来ると聞かされた彼女は、子どもと幸せな時間を過ごしたいという欲望にとらわれ病院を抜け出し、今回の成り代わりを実行した。
つまり、姉弟を招いたのは本物の祖父母であったが、それを精神病患者に話したことで悲劇が起きてしまった。
(通常なら、精神科病院からの脱走者が直前に会っていたボランティア夫婦が次の約束の日に来なかったとなれば警察に通報するものだろうが、そこは目を瞑っておく。)
母がこの世で父母と和解する機会は永遠に失われてしまった。
しかし、孫に会いたいと連絡をしてきた祖父母の行動から、
もし祖父母が生きていたなら、今後和解の機会は訪れただろう。
母は「両親が彼女を許す機会は十分にあった」と言う。
そして、家族を捨てた父にわだかまりがある姉に「怒りに執着してはいけない」と言い聞かせる。
このドキュメンタリー映画の締めのインタビューを終えた後は、弟のラップでエンディング。
後ろには鏡で自分の顔を見ながらメイクをする姉の姿。
軽い調子で後日談が語られる。
とんでもない経験をした姉弟だったが、極限の状態に陥ったからこそ、自分の抱えていた問題に向き合い、自分の力で解決することが出来た。
サイコスリラー的なドキドキと子どもらしいコミカルなシーン、
普遍的な家族愛のテーマで緩急のついた良い作品でした。
唯一気になるのは
ただ、日本版のポスターのセンスのなさ…。
本編観終わってからこのポスターをみると、訳がわからないです。
(映画観て作ったのか疑うレベル)
今月末にシャマラン監督の最新作が公開されるので、非常に楽しみです!
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