衝撃的な報道から心を守る方法

心理学の話

2022年7月8日のお昼頃、安倍元総理が演説中に銃で撃たれたというショッキングなニュースが飛び込んできました。私の職場でも、皆がニュースを見てはざわめき、「まさか日本で…」と半信半疑な様子で現実を受け止めきれない人が多くいました。その後、事態は最悪の展開を迎え、治療を受けていた奈良県橿原市内の病院で亡くなったと発表があり、日本中に衝撃が走りました。

こうした衝撃的な報道があると、普段健康な人でもメンタルに影響が出て、心身が不調になる可能性があります。

事件報道におけるSNSの悪影響

現在、テレビのニュースよりもTwitterやネットニュースなどで情報を得る人が多いことでしょう。

そして、それは報道機関によるニュースとは少し毛色が異なります。

報道機関(テレビや新聞等)は、一度複数の人によって発信の形を検討されてから発表されます。

しかし、Twitterには現場に居合わせた生の人の声や映像が、その時の興奮や衝撃を受けて昂った感情のまま載せられてしまいます

人はそのような状況の時に判断力が鈍ります。結果的に、Twitterにはモザイク処理のない生のままの現場の動画や写真が投稿され、悪意ない人々によって瞬く間に拡散されていきました。

SNSは厳しい年齢制限がなく、何歳でも使えるのが現状です。特にTwitterは幅広い年齢層が利用しています。拡散された生々しい動画や写真は、すぐに未成年者の目に入ることになります。

大人でも、衝撃的なニュースを見て不調になる人もいます。

ましてや子どもたち心身共に成長途中多感な時期であるため、影響を強く受けやすいです。

SNSの発展により、ニュースはより早く、細かく、リアルに伝わるようになりました。一方で、デマや誤報が見分けづらいこと、子どもたち等の心身のためにも見せたくないものが簡単に見れてしまうことはデメリットです。

ならばテレビや新聞なら良いのか、というわけでもありません。テレビでは、制服を着た学生の「目撃証言」が報道されていました。銃撃事件を目撃してしまった未成年に対しての対応として、これは一番良くないことです。事件の衝撃でまだ感情が昂っており、一見心身になんの影響もないように見えます。しかし、事件を目撃した衝撃に、テレビ出演という非日常が重なり、精神的な影響は大きいことが想定されます。

さらに、ほとんど生放送に近い状況であることと、事件の大きさから、学生の言葉に責任がのしかかってきます。新しい情報、生々しい声が命の報道の世界とは言え、あまりにも配慮が足りておらず、驚きが隠しきれない状態です。

心に与える影響と症状

報道で、事件や事故現場のリアルな映像が流れ、悲惨な状況を目のあたりにすると、戦闘態勢にあるかのような緊張感が続きます

この状態が続くと不眠やめまい、動悸、吐き気、胃痛などの身体症状につながってしまうこともあります。

実際に自分が巻き込まれたわけではないのに、心身が不調になること、それを“共感疲労”と言います

「自分がもしそこにいたら…」と恐怖心を感じたり、日常とかけ離れた衝撃に圧倒されてしまいます。

また、報道を知ってすぐは何ともないと思っていても、時間が経ってから心身に影響が出てくる場合もあります。

状況が落ち着いたあとに、恐怖感、食欲低下、動悸、不眠など、「なんかいつもと違う」と感じることがあるかもしれません。

心の不調は以下のことを参考にチェックしてみてください。

・夜の寝つきが悪く、日中にも眠気が残る

・以前より注意力が散漫になり、仕事でのミスや忘れ物が増えた

・なんだか気持ちが沈むことが多く、物事を楽しめない

そういうときは、早め信頼できる人に話してください。

症状が続くようなら、心療内科を受診するのも一つの手です

人は、他人が受けた悲惨な出来事の話を聞いたり、事件・事故などのニュースを見たりすると、「他人ごとではない」と危機感を強めるものです。しかし、この危機感が過剰になると、現実に自分の身に生じていることではないのに、「いつ起こるか分からない」という不安に振り回されてしまいます。

事件や事故の報道で不安が強いときの対処法

日常生活に支障が出るほど不安が続くのは、良いことではありません。

そこで、対処法を3つ紹介します。

  • 不安につながるニュースや映像から距離を置くこと

スマホはしばらくオフにして、テレビもニュースを見ないようにしましょう。

  • 心療内科を受診する。

眠れない、食事が取れない、不安で仕方がないという症状が強い場合には、早めに心療内科を受診してください。上記のような症状が現れるのは、決して精神的に弱いからではありません。むしろ正常な反応なのです。ウイルスが体に入れば風邪を引き、症状が辛ければ病院に行って症状を和らげる薬をもらいます。それと同じで、ショッキングなニュースを聞くと、心も不調になり、症状が辛ければ病院に行って症状を和らげる薬をもらう必要があります。

  • 何かの動作や作業に没頭する。

ひとつのことに時間をかけて没頭し、集中すること。そのときの自分の心身に生じている心地よさや感動を味わってみましょう。すると、外で生じていることに惑わされず、心の安定を取り戻すことができます。時間をかけてご飯を食べたり、時間をかけて料理を作ったり。ヨガ、呼吸法、散歩、陶芸、絵画、手芸、木工などの趣味や作業を、ゆっくりと時間をかけて丁寧に行うのも良いです。

報道に不安を感じる人は、感受性の高い人

悲惨な情報に触れることで辛い思いをする人は、実は感受性が豊かで、優しい心を持っているからこそだと言えます。ぜひ、そうした自分を大事にしてください。

ただし、悲惨な情報に振り回されてしまうと、安心して生活していくことができなくなります。報道で見聞きする内容と「今、ここに生きている自分」とを、適切に切り離していく必要があります

悲惨なニュースや情報に振り回されていると感じたら、いったんその情報から離れましょう。

そして、何か没頭できることに時間を使いましょう。こうしたことを意識して行っていくことで、心が安定しやすくなります。

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