『鳩の撃退法』ネタバレあり感想と考察

映画じかん

あらすじ

かつては直木賞も受賞した天才作家・津田伸一(藤原竜也)は、とあるバーで担当編集者の鳥飼なほみ(土屋太鳳)に書き途中の新作を読ませていた。

〈あらすじ〉
一年前、閏年の二月二十九日。雪の降る夜。かつては直木賞も受賞したが今は富山の小さな街でドライバーとして働いている津田伸一は行きつけのコーヒーショップで偶然、幸地秀吉(風間俊介)と出会い、「今度会ったらピーターパンの本を貸そう」と約束をして別れる。しかし、その夜を境に幸地秀吉は愛する家族と共に突然、姿を消してしまう。それから一か月後、津田の元に三千万円を超える大金が転がりこむ。ところが喜びも束の間、思いもよらない事実が判明した。
「あんたが使ったのは偽の一万円札だったんだよ」
ニセ札の動向には、家族三人が失踪した事件をはじめ、この街で起きる騒ぎに必ず関わっている裏社会のドン・倉田健次郎(豊川悦司)も目を光らせているという。倉田はすでにニセ札の行方と共に、津田の居場所を捜し始めていた……

神隠しにあったとされる幸地秀吉一家、津田の元に舞い込んだ大量のニセ札、囲いを出た鳩の行方、津田の命を狙う裏社会のドン、そして多くの人の運命を狂わせたあの雪の一夜の邂逅……。富山の小さな街で経験した出来事を元に書かれた津田の新作に心を躍らせる鳥飼だったが、読めば読むほど、どうにも小説の中だけの話とは思えない。過去の暗い記憶がよぎる鳥飼。小説と現実、そして過去と現在が交差しながら進む物語。彼の話は嘘? 本当?
鳥飼は津田の話を頼りに、コーヒーショップ店員・沼本(西野七瀬)の協力も得て、小説が本当にフィクションなのか【検証】を始めるが、そこには【驚愕の真実】が待ち受けていた―。

引用:https://movies.shochiku.co.jp/hatogeki-eiga/sp/ (『鳩の撃退法』劇場版公式サイト)

考えられる仮説は2つ

①秀吉は家族を無くし(妻は浮気男と一緒に倉田に消され、娘は寄付した団体の養護施設へ)、倉田とともに生きることになった。

倉田=秀吉である説。津田は直接倉田と会っていないのが理由。

ラストに車の窓越しにいたはいたけど、それが倉田だと津田は認識出来ない場面では当たった。

だから倉田は、津田が噂で聞いたイメージと名前から作り上げた存在である可能性がある。

この2つの可能性が考えられるが、結局のところ決め手はなく、視聴者に委ねられている。

『鳩の撃退法』はストーリーの比喩

「鳩」は偽札=厄介ごとであり、厄介なことを撃退する方法が書かれた物=津田の小説、ということになる。

津田は小説の結末を「車で逃げて逃走し、秀吉家族は失踪してどこかで生きている」というハッピーエンドに創作することによって、一家失踪と偽札事件の両方から手を引いたことを示し、これ以上厄介ごとに巻き込まれない方法を思いついた、と言った具合か?

つがいの鳩の意味

倉田からの「つがいの鳩が飛んでるのを見なかったか?」という伝言について。

鳩=偽札と見れば、つがいの鳩は残りの偽札2万円を指す。

つがいの方に重きを置けば、ダムで見つかった男女の遺体を指す。

そういえば、カフェで秀吉が読んでいた本は『蝶番』だった。

真実はどれ?

富山の人間で、津田の今の居場所(高円寺のバー)を知っているのは、美容院のマエダしかいない。

マエダが倉田に居場所を伝えたから、秀吉と慈善団体の人がバーに訪れることができた。

マエダと倉田のやりとりは津田の創作部分。

田舎の美容院ほど情報が集まる場所はない。

実際は、マエダは倉田側の人間(協力者?)であり、偽札の件でマエダは津田を庇ったのではなく、倉田を庇ったのではないか。

偽札3枚の出所が倉田であることが警察にバレると困るため、倉田は必死に回収に動いた。

ひっかかるのは「倉田さんはお金が嫌い」という台詞。

これは実際に津田が聞いた部分なので、創作ではなさそう。

寄付した理由の根拠のためか?

秀吉が読んでいた本の帯の煽り文「別の場所でふたりが出会っていれば幸せになれたはずだった」を見て、津田は「だったら別の場所でふたりを出会わせるべきだろうな。

そうすればふたりは幸せにできる。」と、同じ小説家として自分ならハッピーエンドに出来る、と話していた。

津田は秀吉のためにハッピーエンドにしたわけでなく、自身の保身のためにストーリーを創作した。

なぜなら津田はピーターパンだから。

家族を車に乗せ逃走する秀吉を見て、嬉しそうな笑顔を見せる倉田。

倉田と秀吉は同じ施設で育ち兄弟のような関係であるため、倉田は秀吉の幸せを願っているから見逃してあげた…という津田の創作部分と考えられる。

それでも残る疑問点

腑に落ちない不自然な箇所がいくつかある。

①デリヘルの秀子の家に晴山がリュックを置きっぱなしにしているのは不自然だし、しかもビデオテープを入れっぱなしにしていくのも変。

②鳥飼編集者が富山を訪れた際、沼田からマイクロSDを受け取り、中も見たと言っていたシーン。

中も見たにしては反応が薄いことに違和感。

感想

『事実は小説よりも奇なり』を描きたかったんだなぁと思った作品。

そして何より脇を固める俳優さんたちの豪華なこと豪華なこと…。

ストーリーは「現在の出来事」「津田の小説部分」「津田が体験した過去の出来事」が組み合わさって出来ていて、その区別が難解なのがこの作品の面白さだし、余韻にもなってる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました